鬼退治の副作用で冷泉に

温泉にまつわる伝説はけっこうある。このブログでも三朝温泉武雄温泉の開湯伝説を紹介した。湯が湧き出すのはありがたいが、逆に涸れてしまうこともあれば、ぬるくなってしまうこともある。大地のこうした不思議を科学的にではなく、合理的に説明しようとするのが伝説なのだ。

浅口市金光町上竹(かみだけ)に「遥照山温泉霊泉」がある。

遥照山では中生代白亜紀に火山活動が盛んだったという。今も流紋岩質の白っぽい岩石が多くみられる。火山活動の名残りが温泉なのだろうか。説明板を読んでみよう。

ラジウム霊泉
(ラジウム鉱を含んだ冷泉で、皮膚病・神経痛などに特効。湧出量1分間12ℓ・14℃を有している。昭和63年度には、この地の伝説をもとに“金光遥照太皷”を創作)
【伝説】むかし、この山に鬼が住んでおり、ある日、吉備津彦命が鬼退治にやって来た。鬼は矢に当たると逃げて、この地の温泉に入り、すぐに元気をとりもどして戦いに加わった。吉備津彦命は温泉の湯元を埋めて、鬼を退治した。こうして、温泉は冷泉となったが、「病気にきく」と今も人々に親しまれている。

温泉と冷泉の境は25℃だという。25℃以上で温泉だから、14℃の遥照山温泉は冷泉に分類される。ところが大昔は温泉だったというのだ。

温泉が冷泉になってしまう話は時々ある。群馬県太田市藪塚町にある「薮塚温泉」もその一つだ。ここでは、馬が飛び込んで天高く舞上ったことで冷泉となり、以来、湯を沸かして入るようになったという。

遥照山温泉の場合は、鬼退治である。鬼が元気を回復してしまうからと湯元を埋めた。言うなれば医療施設への攻撃であり、国際人道法であるジュネーブ条約の禁止事項に該当する疑いがある。

鬼は退治できたが、温泉は冷泉となって今に至っているのだ。まさかキビツヒコと鬼が話し合いで解決しておけばよかったわけでもあるまい。霊泉は長く湯治に利用され、飲用にも適している。癒しの温泉の付加価値を高めるのが伝説なのである。

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