怪鳥退治の英雄が乗った馬

実在しない鳥はけっこういるもんで、縁起がいいのは鳳凰、サッカーでおなじみ八咫烏、手塚漫画の傑作「火の鳥」フェニックス。怪鳥なら「鵺(ぬえ)」だろう。源三位頼政が退治したという化け物で、頭は猿、胴は狸、手足は虎、尾は蛇だという。本日の怪鳥や如何に。

掛川市佐夜鹿の旧東海道沿いに「馬頭観世音」が安置されている。

天下の大道、東海道。人や馬がたくさん行き交ったことだろう。旅の安全を祈るために祀ったのが、馬頭観世音ということか。説明板を読んでみよう。

馬頭観世音
佐夜の中山峠には、多くの伝説が残されていますが、その一つに蛇身鳥(じゃしんちょう)退治の物語が言い伝えられています。
この馬頭観世音は、蛇身鳥退治に京の都より下向して来た、三位良政卿が乗って来た愛馬を葬ったところとされています。

蛇身鳥退治にやって来た三位良政卿の愛馬のお墓だという。馬よりも蛇身鳥が気になる。夜泣石伝説を有名にした曲亭馬琴『石言遺響』(文化二年、1805)には三位良政や蛇身鳥が登場するが、その元ネタとなったのが『小夜中山霊鐘記』(寛延元年、1748)である。蛇身鳥はもちろん、遠州七不思議の夜泣石、無間の鐘も登場する。蛇身鳥は、どのような姿だろうか。

現れ出し其形、実にや頭は大蛇の如く、左右の翼は金趐鳥の如く、両の眼は日月の如く、雙の角は枯木に似、利牙は劔の如く、紅の舌を巻き、火焔を吹てぞ待かけたり

めちゃくちゃ怖い。これを退治するため京を出る三位良政は…

良政其の日の出立は、赤地の錦の直垂に、紫威の鎧、草摺長に打懸け、臥龍の腹巻しかとしめ、楊柳桃李の小手脚当、辰頭の五枚兜を居首に着なし、二尺三寸の金作り重代の御帯、足房長に結び下げ、獅子丸の鎧通を指添へ、塗籠藤の弓に、石弦懸て、小脇にかい込み、廿四指たる染羽の矢を負ひ、日月を表せし流鎬の中指、右手に手ばさみ、長月といへる、名馬八寸に余りて、太くたくましきに、白檀磨の筋金打たる鞍置せ、黄糸厚総の繇(おもがひ)かけ、優々と打乗て、三百余騎を前後に打せ、遠州さして立玉ふは、何なる鬼神なりとも、恐れつべうぞ見にけり

めちゃくちゃ格好良い。三位良政公の出で立ちも素晴らしいが、公の乗る長月という馬も立派だ。八寸に余る名馬とは、生月磨墨くらいの駿馬だ。そういえば、長月は生月に似ているし、三位良政は三位頼政に似ている。『平家物語』へのリスペクトが込められているのだろう。

物語の馬なのにお墓があるのは不思議だが、『源氏物語』にも史跡があるくらいだから、伝説の名馬のお墓があってもいいだろう。三位良政の物語がそれほど人気を博していたことの証拠である。良政は見事、蛇身鳥を討ち果たしたそうだ。めでたし、めでたし。

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