近年は低山人気で、ご当地アルプスの縦走を楽しむ人が多い。私はそこまで純然たる愛好家ではないが、そこに歴史的な何かがあれば足を踏み出し、これまで和気アルプス、上郡アルプス、用瀬アルプスを紹介したことがある。本日は高御位(たかみくら)山を最高峰とする播磨アルプスの枝尾根にある桶居(おけすけ)山をレポートしよう。

姫路市飾東町唐端新(しきとうちょうからはたしん)と同市別所町佐土新(べっしょちょうさづちしん)の境に「桶居山(おけすけやま)」がある。
竜の背と見まごう長い稜線が待っている。竜に気付かれないように、さっさと進んで行こう。

頂上手前にある奇岩「こけし岩」である。火山礫凝灰岩らしい。時に不思議な造形物を作り出すのが風化だ。

三等三角点「桶居山」247mである。この低さにしてこの迫力。だから低山ハイクはやめられない。

頂上から東側へ下りて振り返った。後期白亜紀の火山活動によって生まれたという鋭鋒。何千万年もの時間を耐え抜いた姿に畏怖の念を抱く。
私たちをはるかに超越したものを前にすると、少々のことでは驚かなくなる。『播磨鑑』印南郡名所舊跡竝和歌附異談を読んでみよう。
【桶居(ヲケスエ)山】佐土ノ地内北ノ山佐土新村ノ北 上ノ山巓少シ平也 此山至テ險難ノ岩山也
〔宮本武藏修行説〕此山ニテ古ヘ宮本武藏天狗ニ兵法ヲ習ヒシ處ト云 武將感狀記ニ宮本武蔵ハ二刀ヲ好ム 細川越中守忠利公ニ仕へ五千石ヲ賜リテ家老職ト成 其前兵法修行天下ヲ巡見セシ人也 又播磨武藏ト云明石ニテ兵法ノ仕合有ト云 此武藏ハ揖東郡鵤ノ宮本村ノ産ナル由 細川家ニ仕フルト有ハ非也 小笠原家ニテ客分トナリ無役ニテ五千石ヲ賜ハリシト也
この山で宮本武蔵が天狗に兵法を習ったという。ああ、そうだろう。岩陰にはきっと天狗が潜んでいたのだろう。武蔵が高く飛んで小次郎を倒したのは、この岩山での修行の成果だったのだ。
吉川英治は修行の山を伊勢の鷲嶺(しゅうれい)548mとした。荒々しい岩肌は確かに鍛錬に相応しい場だ。しかし『播磨鑑』が武蔵は揖東郡(後の揖保郡)宮本村生まれというのだから、地元播磨で修行したと考えるのが自然だろう。

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