水没ペンション村(瀬戸内市)がSNSで話題になっているそうだ。数年前に見たことがあるが、確かにシュールだ。その日はよく晴れており、水に沈むペンションと風景の青さとのギャップが印象に残った。だが実際には、臭いや虫で大変なようだ。しかも失敗した事業の残滓だけに、見ているとつらくなる。


香川県善通寺市吉原町に「大塚池古墳」がある。池の中の浮島に見えるが、水没古墳である。
「俺の墓が水没かよ。」被葬者が嘆いているかもしれない。だが、石室だった石材が風景に馴染んで、むしろ美しく見える。この日は雨模様。池には水紋と筆ノ山の影が映っている。いったい、どのような古墳なのか。説明板を読んでみよう。
大塚池古墳(吉原椀貸塚)
大塚池の中に残る巨石は6世紀末~7世紀初頭、古墳時代の終わり頃に造られた古墳です。墳丘は直径約25mの円墳で、主体部は一部崩れていますが全長12m、玄室の長さ6.2m・幅2.5m、羨道の長さ6.6m・幅1.7mと大型の横穴式石室です。
古墳時代の終り頃にはこの古墳のようにとても大きな石で造られたものがあり、巨石墳と呼ばれていて、力を持った豪族の墓と考えられています。
大塚池古墳は墳丘の土が失われて石室が完全に露出していますが、これはここに池を築く際に、古墳から必要な土砂を取ったためと考えられています。石室に使われている巨石はこの辺りにある角礫凝灰岩です。
この古墳は吉原椀貸塚(よしはらわんかしづか)とも呼ばれ椀貸伝説が伝わります。「昔の農家では膳椀は家族分くらいしか持って無いため、冠婚葬祭などの時にはその準備に困る。そのような時にこの塚の前で前もって必要な数だけ貸してくれるようにお願いしておくと、頼んでおいた日には塚の前にお願いしたとおりの膳椀が準備されている。使用後はきれいに洗ってもとの場所に戻す決まりがあったが、誰かがこれを守らなかったため二度と貸してくれなくなった。」というものです。
通常古墳の石室内には多量の土器が副葬されていますが、盗掘などによりその土器が次第に持ち出され、最後には無くなってしまう様子を椀貸伝説に変えて「折角の恩恵が人間の不道徳によって失われる教え」を言い伝えたものだと考えられています。
香川県 善通寺市
もとは円墳で、ため池を築く際に土砂を取ったため、石室が露出したのだという。工事開始前に、古墳があることに気付かなかったのだろうか。文化財保護の観念が薄い時代、別にいんじゃねと墳丘を削ったのだろうか。いずれにしても筆ノ山と我拝師山から流れ落ちる雨水を溜めるのに好都合な場所である。
吉原町の平野部から南を望めば、地域のシンボルとして古墳が見えたはずだ。当時はリーダーとして四季の農作業を見守り、今は溜池となって田を潤している。椀貸伝説が附随しているのも、困った時には助けてもらえると人々が信仰していた証だろう。水没しているが、地域にリスペクトされているのは変わらない。

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