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平安

伝説の歌人と風流な大名

和泉式部の史跡は随所にあるので,史実としての信憑性に欠けるが,民俗学的には興味深い。式部を騙ったのか,式部に仮託したのか,式部と混同したのか,いずれにしても人々の思いが籠っている場所だ。姫路市青山2丁目の稲岡山の東山麓に「歌書ヶ渕」がある。...
江戸中期

神様になった大名

神社の祭神は記紀神話の登場人物の場合が多い。天下統一の三英傑も神となっている。近代においては軍神が崇められた。今日紹介するのは藩祖を祀る神社である。高槻市野見町の野見神社の境内社として「永井神社」がある。この地は高槻城三の丸北郭にあたり,高...
安土桃山

耳塚の悲劇

秀吉は日本人にとって英雄の一人である。出世の階段を上り詰めたという人間的な魅力に加えて,太閤検地など近世社会の基礎を築いた人物として高く評価されている。しかし,朝鮮侵略(文禄・慶長の役)となると話は別だ。京都市東山区正面通大和大路西入ル南側...
戦国

「なで切り」の時代

門柱に表札がついている。「首塚さんのおうちか…」 いや,そうではない。ここは慰霊の場所なのだ。浜松市北区細江町気賀に「堀川城趾」の石碑があり,その傍らに「首塚」はある。周辺は水田で特に高台に位置するわけではない。それでもここに城が築かれたの...
戦後

三木鉄道92年前の選択

廃止前の鉄道には多くの人が訪れる。失われゆくものを惜しむ気持ちはよく分かる。二度と同じ風景を見ることができないのだ。過ぎ行く時間さえ惜しい気がする。しかし,世の中そんなものだとも思う。長い歴史に同じものが長く続いた例はないのであった。三木市...
明治

幻の大坂遷都史跡

「日本一低い山」は,何をもって低いとするのかと思ったら,国土地理院の地形図に掲載されているかどうからしい。地形図を作製する担当職員にとっては重責だ。敷石と同化しているように見えるのは,大阪市港区築港3丁目にある「天保山」の二等三角点である。...
明治

山村の凱旋門

凱旋門はパリにあるものと思っていたら,日本にもあったのだ。パリのそれはナポレオンの命により建設が始まったが,今日紹介する凱旋門は地域の住民が建てたもののようだ。浜松市引佐町渋川に「凱旋紀念門」があり,国登録有形文化財に指定されている。日露戦...
鎌倉

「てんかさん」は天下にあらず

「てんかさん」と聞くと天下人を連想し,秀吉関係かと思ったら,そうではなかった。今日紹介するのは越部荘,藤原俊成の荘園にかかわる史跡である。たつの市新宮町市野保に「てんかさん」がある。たつの市の指定文化財となっているが,「てんかさん」は通称で...
戦後

紫紺の宝石ピオーネ

岡山県は果物王国である。とりわけ桃とぶどうは全国に知られる。実りの季節も終わったのだが,ぶどうの話をしたい。マスカットは球場の名前になるほどビッグネームだ。しかし最近では,種があるだの皮離れが悪いだのと敬遠する向きもあるようだ。そこで人気が...
神話

がっくりしないロマンの小橋

訪れる前の期待を見事に裏切る観光地を「がっくり名所」という。高知市の「はりまや橋」がよく挙げられる。坊さんかんざしの情趣豊かなイメージが知られているが,実際には橋の周辺は都会の喧騒に包まれている。福山市鞆町後地に「ささやき橋」がある。橋のひ...