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安土桃山

祭りと酒が伝える人望

支配者がどのように民衆の記憶に残るかは興味深いところだ。忘れ去られる者が圧倒的に多いが,悪くすると暴君とされ,上手くいくと名君となる。本日紹介する名君は戦国の敗者である。しかしながら,その負けた戦いの様子が再現されるほどに偲ばれている人物で...
江戸前期

印旛沼の美しさ

近江八景をはじめとして,日本各地に八景がある。宋代の瀟湘八景に倣って美しい風景を列挙したものである。臼井八景もその一つだ。佐倉市臼井田干拓から眺める印旛沼は,臼井八景の第一景「舟戸夜雨」(ふなとやう)である。舟戸大橋のたもとの辺りだ。舟戸は...
平安

菅公は安産の神様

厩戸皇子が伝説化して聖徳太子となったように,菅原道真もまた,天神様として伝説に彩られた人物である。左遷の菅公がお通りになった瀬戸内には,さまざまな霊験譚がある。岡山市十日市東町の子安天満宮に「御祭神菅公腰掛石古跡」がある。座るのにちょうどよ...
鎌倉

バス停が伝える親王の御名

「我こそは新島守よ隠岐の海の荒き浪風心して吹け」 気丈な後鳥羽上皇は,配流の地でこう詠んだ。和歌の名手にして武芸も多才,豪奢な生活を支える広大な荘園と,知・体・財の三拍子そろった人物であった。ただ政治的な判断を誤ったことで,自らの人生を変え...
飛鳥

幻の土佐国分尼寺

塔の心礎が好きだ。どっしりと構え何事にも動じようとしない抜群の安定感がある。そして,そこにあった塔の姿は如何ばかりであったろうかと,想像力を掻き立ててくれる。南国市比江に「比江塔趾」(比江廃寺塔跡)がある。国分寺ができる以前の白鳳時代の寺院...
戦前戦中

青春のメッセージは永遠に

「青春は短い。宝石の如くにしてそれを惜しめ。俗卑と凡雑と低吝とのいやしくもこれに入り込むことを拒み、その想いを偉いならしめ、その夢を清らかしめよ。夢みることをやめたとき、その青春は終わるのである。」倉田百三『愛と認識との出発』の有名な一節で...
南北朝

楠木正成の発見

忠臣といえば楠木正成が連想されるほど,その忠節ぶりは大いに喧伝されてきた。勤皇精神の一途さは後世の人々に感銘を与えた。しかし,その正成を世に送り出したのは,他ならぬ水戸黄門様であった。神戸市中央区多聞通3丁目に鎮座する湊川神社に「嗚呼忠臣楠...
戦後

望遠鏡で見た北方領土

日本国の領土でありながら自由往来のできない北方領土。地図で見るのと実際に見るのとでは迫力が違う。百聞は一見に如かず,とはこのことだ。根室市納沙布にある北方館から「貝殻島」が見える。形式的には根室市に属するのだが,実質的にはロシアのサハリン州...
明治

小さな墓

ロシアの皇太子が,訪日中に警護に当たっていた日本の巡査に襲われる。この衝撃的なテロ,大津事件は多くの人とその心を動かした。明治天皇の機敏な対応,死刑にせよと訴える政府高官,法に基づいて処理しようとする大審院長,動揺する国民,そして,事件とそ...
戦後

歯痛に効く観音様

仏像なら如意輪観音が好きだ。片膝を立て頬杖をつき,アンニュイな雰囲気を漂わせている。観音様御自身は倦怠感など感じていらっしゃらないだろうが,俗世界に住む者には親しみやすい仏像である。長野県北佐久郡軽井沢町大字追分の泉洞寺には,文学愛好家の間...