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明治

岡山で被災した夏目漱石

『それから』が森田芳光監督によって映画化された時、本気で夏目漱石を読もうかと思った。三千代役の藤谷美和子さんがセピア色に写るポスターが、ノスタルジックで切ない雰囲気をよく表していたのを憶えている。しかし実際には、映画も見なかったし小説も読ん...
江戸後期

出雲街道をゆく(首切峠→四十曲峠)

首の皮一枚でつながっているとは自分のことかと疑心暗鬼になる。実のところ、動脈も神経も切れているから命まではつながっていない。それでもつながる薄皮に希望を託して毎日頑張っているのだが、おいと呼び止められ、お前はすでに死んでいると引導を渡された...
鎌倉

みやこ人たれふみそめて

承久の乱は日本史上最大の画期であるといって過言ではないだろう。源平合戦の頃には、後白河法皇の策略に武士は翻弄されていた。それから三十数年を経て承久の乱の戦後処理では、3人の上皇と2人の皇子の配流、天皇廃位、所領没収という過酷な処分を武士が下...
江戸後期

医学と化学に貢献した学者一族

津山名物にはホルモンうどん、干し肉、そずり鍋など肉関連、桐襲、よこの餅、五大北天まんじゅうなどの和菓子が知られている。いずれも食通をうならせる逸品である。また、歴史好きで歴史を熱く語りたい方には、榕菴珈琲(ようあんコーヒー)なるものがおすす...
明治

北条県庁の守衛さん詰所

私の母方の祖父は日中戦争で戦死している。高校生の頃、その祖父の戦友からのお招きで、戦友会か慰霊祭か、何かの会合に母親と一緒に参加したことがある。場所は姫路の自衛隊駐屯地であった。私が道からそのまま敷地内へ入ろうとした途端、守衛さんに呼び止め...
戦後

憲法は絵にかいた餅ではない

憲法の第何条に何が記されているかをスラスラ言える人は少ないが、全103条のうちいくつか有名な条文がある。有名ランキングトップは、やはり戦争放棄を規定した9条だろう。現実と合っていないだとか平和の礎だとか、何かと話題になることが多い。他の条文...
大正

大正時代のハイカラ病院

「はいからさんが通る」は、漫画を読んだこともないし映画を見たこともない。それでも南野陽子さんの歌だけは、今も脳内で再生することができる。大正ロマンの世界観を遺憾なく表現しているようだが、どうだろう。私は夢想する。大正時代がさらに数十年続いて...
大正

日本一の南無妙法蓮華経

アラビア書道という世にも美しい芸術がある。イスラムの教えが偶像崇拝を禁じているから、文字デザインが発達したのだという。それは森のようでもあり都市のようでもあり、宇宙のようでもある。宗教においては、美しさとか感動という理屈ではない要素が果たす...
鎌倉

中世山陽道に見られる祈りの場

関東を旅していると、頂部が山形をした板状の供養塔に出くわすことがある。それが印象深く感じるのは形が珍しいからだけではない。翠緑の石は自然の中にあって際立つ存在感を放つ。このブログでも「だけども問題は今日の雨、みのがない」で紹介したことがある...
明治

心が追はれてゐるやう

季節の移ろいに私たちは詩情を喚起させられるが、初春に生きる喜びは格別だ。萌えいづる春の中で、思い切り背伸びをしたくなる。この時季に決まって思い起こすのは川端康成『古都』の冒頭である。春のやさしさとの出会い、それは一期一会、今でしか感ずること...